結論|生命保険は「公的保障と貯蓄で足りない分」に備えるもの
結論から言うと、「生命保険はいらない」と一律には言えません。会社員であれば、遺族年金や傷病手当金、高額療養費制度といった公的保障が用意されており、万一のときにまったくの無防備というわけではありません。
ただし、子どもの生活費や教育費、住宅ローンの状況、配偶者の収入、これまでの貯蓄額によって、公的保障だけで足りるかどうかは家庭ごとに大きく異なります。
そこで考え方の軸になるのが、次の式です。
必要保障額 = 遺族に必要な生活費・教育費・住居維持費 −(公的保障+配偶者の収入+貯蓄+団信など)
これは、遺族の生活に必要なお金から、すでに用意されている保障や資産を差し引き、それでも足りない部分だけを民間保険で補うという考え方です。
全部を保険でまかなうのではなく、「不足分」に絞って備えることで、保険料を抑えながら必要な保障を確保しやすくなります。
まず確認したい4つの公的保障と住宅ローンの保障
民間保険の要否を考える前に、すでに持っている公的保障や制度を確認しておくと、過不足のない判断がしやすくなります。ここでは代表的な4つを整理します。

遺族年金|子どもがいる配偶者の生活を支える土台
亡くなった方の年金加入状況や遺族の条件によっては、遺族基礎年金や遺族厚生年金を受給できる場合があります。
会社員など厚生年金保険に加入していた人が亡くなった場合は、遺族厚生年金が関わる可能性があります。受給できるかどうか、また金額がいくらになるかは、亡くなった人の働き方や年金加入歴、配偶者や子どもの年齢、家族構成によって変わります。
日本年金機構の情報を確認しながら、自分の家庭ではどの程度の遺族年金が見込めるのかを把握しておくとよいでしょう。
遺族年金があるからといって死亡保障が不要というわけではなく、実際の生活費・教育費に対してどの程度不足するのかを確認する視点が大切です。
傷病手当金|病気やけがで働けない期間の収入を補う
会社員等が加入する健康保険の被保険者には、一定の条件を満たすと傷病手当金が支給される場合があります。一方で、自営業やフリーランスが加入する国民健康保険では、原則として同じ保障は受けられません。
全国健康保険協会などの情報で、自分の働き方に応じた保障内容を確認しておくと安心です。なお、死亡への備えと、働けなくなったときへの備えは性質が異なるため、混同せずに分けて考えることが大切です。
高額療養費制度|医療費の自己負担には上限がある
高額療養費制度は、公的医療保険が適用される診療について、1か月あたりの自己負担額に上限を設ける制度です。
ただし、差額ベッド代や先進医療にかかる技術料、通院・交通費、病気やけがによる収入の減少などは、この制度の対象外であり、原則として別途備える必要があります。
医療保険への加入を検討する際も、まず高額療養費制度でどこまでカバーされるかを踏まえたうえで判断すると、保障の過不足を減らしやすくなります。
団信|住宅ローンがある家庭の重要な確認ポイント
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの契約者に万一のことがあった場合に、ローンの残高が弁済されることがある仕組みです。
住宅ローン残高に対する死亡保障を考える際は、まず団信の有無や保障範囲を確認することが出発点になります。
ただし、ペアローンや連帯債務の場合は、片方に万一があってもローン残高がすべてなくなるとは限らない場合があるため、契約内容を個別に確認する必要があります。
住宅ローンの繰上返済と資産形成のバランスに関心がある方は、繰上返済と新NISAの優先順位を扱った記事もあわせて確認してみるとよいでしょう。→住宅ローンの繰上返済と新NISA、どっちを優先すべき?金利上昇時代の判断軸をFP2級が解説【2026年版】
実際の保障内容は、住宅ローンの契約書や団信の保障内容に関する書類で確認しましょう。
死亡保障が必要になりやすい人・急いで厚くしなくてもよい人
公的保障や団信を踏まえたうえで、実際にどのような家庭で死亡保障の必要性が高まりやすいのか、逆にどのような家庭では急いで厚くしなくてもよい可能性があるのかを整理します。

死亡保障の必要性が高まりやすい人
- 子どもが小さく、生活費や教育費が長期にわたって必要な世帯
- 片働き、または夫婦の収入差が大きい世帯
- 貯蓄がまだ十分に育っていない世帯
- 団信がない、または住宅ローンの保障内容が不十分な場合
- 自営業・フリーランスなど、会社員に比べて収入保障が薄くなりやすい人
死亡保障を急いで厚くしなくてもよい可能性がある人
- 扶養家族がいない人
- 夫婦ともに安定した収入があり、片方に万一があっても生活が大きく崩れにくい世帯
- 預貯金や金融資産で不足分をある程度補える世帯
- 子どもが独立し、教育費の負担が減った世帯
- 団信によって住宅ローン残高への備えができている世帯
ここで挙げたのは、あくまで「厚くしなくてもよい可能性がある」という目安であり、生命保険そのものが不要と断定するものではありません。家計の状況は変化していくため、定期的な見直しが前提になります。
必要保障額は「支出−公的保障−資産」で考える
必要保障額の基本式
必要保障額を考える際は、年収の何倍といった単純な基準だけに頼るのではなく、次のような式で捉えると実態に近づきやすくなります。
必要保障額 = 遺族に必要な生活費・教育費・住居維持費 −(遺族年金+配偶者の収入+預貯金・金融資産+団信など)

生活費の水準や教育方針、配偶者の働き方、住居費、住宅ローンの契約内容によって、必要な金額は世帯ごとに変わります。
民間保険は、この式で算出される不足分を、必要な期間だけ補うものとして考えると無理のない設計がしやすくなります。
30〜40代子育て世帯の確認例
たとえば、35歳の会社員で、配偶者はパート勤務、未就学児が1人、住宅ローンありという世帯を想定してみます。
この場合、まず確認したいのは、遺族の生活費、教育費、住居維持費といった支出の見込みです。そのうえで、遺族年金の見込み額、配偶者の収入、預貯金・金融資産、団信による住宅ローンへの備えを差し引き、残った不足分がどの程度になるかを確認します。
実際の金額は、遺族年金の受給条件や団信の保障範囲によって変わるため、具体的な数字は各家庭で確認する必要があります。
住宅ローンや老後資金を含めた長期的な家計の見通しに関心がある方は、金利上昇局面における住宅ローンと老後資金を扱った記事も参考になるかもしれません。→金利2.49%時代を「好機」に変える——50代住宅ローン保有者のためのパーソナル・ガバナンス入門 | FP2級ヒロの金融リサーチ・ジャーナル
加入・見直し前に確認したい3つのこと
生命保険への加入や見直しを検討する前に、まず次の3点で現在地を確認しておくとよいでしょう。
- 遺族年金などの公的保障の見込みを確認する
- 勤務先の福利厚生、死亡退職金、弔慰金、休職制度の有無を確認する
- 住宅ローンの団信の内容と、いま加入している保険の死亡保障額・保障期間・保険料を確認する
保険に加入する、あるいは解約するという結論を急ぐ前に、まずこうした「現在地」を把握することが、無理のない判断につながります。
まとめ|生命保険の必要性は、家族と家計の変化に合わせて見直す
生命保険の必要性を判断する第一歩は、遺族年金や傷病手当金、高額療養費制度といった公的保障に加え、団信の保障内容を確認することです。
子どもが小さい時期や貯蓄がまだ少ない時期は、不足額が大きくなりやすい一方、子どもの独立や住宅ローンの減少、資産形成の進展にともなって、必要保障額が下がっていくこともあります。
加入するか解約するかという二択で考えるのではなく、保障額・保障期間・保険料を家族と家計の変化にあわせて定期的に見直していく姿勢が大切です。
保険料と新NISAへの積立額をどのように配分するか迷う方は、新NISAとiDeCoの優先順位についても確認してみてください。→新NISAとiDeCoどっちを優先すべき?20〜40代会社員向け【2026年版】



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